ENC28J60の概要


【ENC28J60の概要】

小型パッケージのイーサネットコントローラです。
外付けにパルストランス内蔵LANコネクタを追加するだけでLANに接続できます。
下記のような特徴を持っています。

【基本の特徴】
 ・IEEE802.3に準拠したイーサネットコントローラ
 ・MAC部と10BASE-T対応のPHY部を内蔵
 ・半二重と全二重対応
 ・自動再送と衝突検出
 ・CRCチェックを自動生成、チェック
 ・SPIインターフェース最高20Mbps
 ・8kバイトのRAMバッファ内蔵、バッファサイズ任意設定可能

【MAC部の特徴】
 ・ユニキャスト、マルチキャスト、ブロードパケットに対応
 ・受信フィルタプログラマブル  LANウェイクアップもプログラマブル
 ・ループバックモードあり

【PHY部の特徴】
 ・波形整形、トランシーバ内蔵
 ・ループバックモードあり

【その他】
 ・2個の発光ダイオード制御、点灯条件設定可能
 ・25MHz動作
 ・電源 : 3.14V〜3.45V (3.3V±5%)
 ・外部インターフェース : TTL互換 入力5V可能
 ・パッケージ : 28ピン DIP、 SSOP、 SOIC、 QFN


【全体構成と動作概要】

 ENC28J60の全体構成を簡単に表すと下図のようになります。
LANとの接続は標準のRJ45コネクタで行います。その後ろにパルストランス
を接続しますが、最近はこのパルストランスも内蔵したRJ45コネクタがありますので
これを使えば、より簡単な構成となります。さらにこのタイプのコネクタには、赤と緑
の2個の発光ダイオードも内蔵していますので、LEDA、LEDBも省略できます。

 EN28J60の内部には、まず物理インターフェース部(PHY)があり、ここには
トランシーバと波形整形回路が内蔵されていて実際の物理的な信号の送受を
行います。
 MAC部は、媒体アクセス制御(Medium Access Control)と呼ばれ、通信の下位層
のプロトコルを実行します。IEEE802.3で規定されたCSMA/CDの仕様の大部分が
ここで実行されます。
 上位ホストとのインターフェースはSPIインターフェースとなっていて、スレーブ
デバイスとして動作します。また割り込み信号として2本の信号が用意されています。
(INTとWOL)この割り込み信号をウェイクアップ用として使うこともできます。




【ピン配置とピン機能】

ENC28J60のピン配置は下図のようになっています。DIPとQENでピン配置が
やや異なります。



ピン名称 ピン番号 タイプ 機 能
DIP他 QFN
VCAP 1 25 P 内蔵レギュレータの2.5V出力、10uFでVSSTX(GND)と接続
VSS 2 26 P グランド(GND)
CLKOUT 3 27 O クロック出力(プログラマブル)(注1)
INT 4 28 O 割り込み出力(注2)
WOL 5 1 O ウェイクアップ用割り込み出力(注2)
SO 6 2 O SPIデータ出力(注2)
SI 7 3 I ST SPIデータ入力(注3)
SCK 8 4 I ST SPIクロック入力(注3)
CS 9 5 I ST SPIチップ選択(注3,4)
RESET 10 6 I ST リセット外部入力(注3,4)
VSSRX 11 7 P PHY RX用グランド
TPIN- 12 8 I ANA 差動信号入力
TPIN+ 13 9 I ANA   〃
RBIAS 14 10 I ANA PHY用バイアス電流 2kΩ1%でVSSRXと接続
VDDTX 15 11 P PHY TX用電源
TPOUT- 16 12 O 差動出力
TPOUT+ 17 13 O  〃
VSSTX 18 14 P PHY TX用グランド
VDDRX 19 15 P PHY RX用電源
VDDPLL 20 16 P PHY PLL用電源
VSSPLL 21 17 P PHY PLL用グランド
VSSOSC 22 18 P 発振器用グランド
OSC1 23 19 I DIG 発振器入力
OSC2 24 20 O 発振器出力
VDDOSC 25 21 P 発振器用3.3V電源
LEDB 26 22 O 発光ダイオードAドライブ出力(注5)
LEDA 27 23 O 発光ダイオードBドライブ出力(注5)
VDD 28 24 P 3.3V電源

注)記号の意味 I:入力 O:出力 P:電源
  DIG:ディジタル入力 ANA:アナログ入力 ST:シュミットトリガ入力

注1)最大ピン許容電流 : 8mA
注2)最大ピン許容電流 : 4mA
注3)ピンは5V入力可能
注4)ピンは内部でプルアップされている
注5)最大ピン許容電流 : 12mA

【内部構成詳細】

ENC28J60の内部構成の詳細は下図のようになっています。
・SPIインターフェース部はホストとなるマイコンとの通信チャネルとなります。
・バスインターフェースはSPI経由のコマンドの解析を行います。
・制御レジスタ群には、ENC28J60を制御するための数多くのレジスタが
 含まれていて、SPIインターフェース経由でホストからアクセスできます。
・8kBのデュアルポートRAMは、送受信するパケットの格納バッファとなります。
・アービタは、デュアルポートRAMをアクセスする送受信とDMAアクセスの
 優先順の整理をします。
・MAC部はIEEE802.3の仕様に従ったMACプロトコル制御を行います。
・PHY部はLANの通信線の差動信号を送受信して、エンコードとデコードを
 行います。
・電圧レギュレータ部では、外部供給の3.3Vから内部コア用の2.5Vを生成します。




【実際の使い方】

ENC28J60の実際の外部接続回路は、下図のようにします。
この場合もパルストランス内蔵のコネクタとすればより簡単な構成となります。





ENC28J60の入出力規格は下表のようにTTLインターフェースとなっていますので、
上図の3.3Vから5Vへのシフトアップ回路は、ホスト側が5Vインターフェースの場合に
のみ必要となります。

記号 意味内容 規格 条件他
Min Max 単位
VIH Highレベル入力電圧 2.0 5.5 V SCK、CS、SI
0.85VDD VDD V OSC1
0.85VDD 5.5 V RESET
VIL Lowレベル入力電圧 -0.3 0.8 V SCK、CS、SI
VSS 0.3VDD V OSC1
VSS 0.8 V RESET
VOL Lowレベル出力電圧 −− TBD V SO、CLKOUT
−− TBD V INT、WOL
VOH Highレベル出力電圧 TBD −− V SO、CLKOUT
TBD −− V INT、WOL





        目次に戻る