「クロック」って何?
【クロック】
- クロックというのは、コンピュータの世界や、ディジタルロジックの世界
- では、一般に回路を動かすためのペースメーカとして使われる信号のことを
言い、常に一定の周波数の信号を使います。
いわば人間の心臓と同じ働きをし、全ての回路のタイミングの基となる信号
です。マイコンは、外部部品で作られるクロック信号を基にして、内部クロック
を作り出し、全てのタイミング制御を行っています。
従って命令の実行もこのクロックが基になって実行されています。これから、
命令の基本サイクルが何クロックで実行されるなどという言い方がされます。
【発振回路素子】
- マイコンのクロックを作成するために使われる発振回路には、使われる素子
によって下記のような3種類があります。
RC発振 : 抵抗とコンデンサによる発振回路による
セラミック発振 : セラミック振動子を使用した発振回路による
クリスタル発振 : クリスタル振動子を使用した発振回路による
【発振素子の使い分け】
- 3種類の発振素子の使い分けは凡そ下記のようにします。
@ RC発振
メリットは抵抗とコンデンサだけで出来るため安価であることと、部品
点数が少ないこと。
デメリットは、発振周波数が正確に決めるのが難しいことです。これは
抵抗やコンデンサの精度が余り良くないことと、温度により変化すること
です。
以上から、
・比較的周波数がいいかげんで良い場合、例えばゲームなど
・また発振周波数が数100KHzと低くて良い
場合に使います。
A セラミック発振
メリットはセラミック振動子の周波数変動誤差は0.5%程度なので比較的
高精度の周波数が出せる。クリスタル振動子より安いことです。
デメリットは電圧が変化する様な用途では、発振が止まってしまう事がある。
以上から
・外に高精度の時間要素が無く、一定の電圧で使用する
場合に使います。
B クリスタル発振
最も周波数精度が高く(50ppm(0.005%)以下)安定である。
しかしやや高価である。
以上から
・時計機能などが必要な高精度発振が必要な場合
・通信をするような機能がある場合
・一定の時間を高精度で使う必要がある場合
などの場合に使います。
【発振回路の注意】
- 各発振回路にはPICのマニュアルに推奨回路があります。その中にある
セラミック発振子やクリスタル発振子の場合、付加するコンデンサの容量
に推奨値があります。
この推奨値を守ってコンデンサを付加することで安定な発振を得ることが
できます。極端に異なる値のコンデンサを付けた時には発振しないことも
あるので要注意です。
【発振が安定するまでの時間】
- いずれの発振回路でも、電源が加えられてから、発振を開始し、発振振幅
電圧が安定するまでには若干の時間がかかります。
この安定するまでの間は、マイコンが不安定な動作をすることも考えられる
ので、この不安定時間より十分長い時間の間「リセット」をかけてマイコンを
停止状態のままとしておきます。
この不安定時間の目安は下記のようになります。
RC発振 : 1.5〜5.0msec
セラミック発振 : 2.0〜5.0msec
クリスタル発振 : 5.0〜10 msec
しかし、PICの場合には、このための回路を内蔵しており、電源ON後
クロック安定を待つ時間を加えて、リセット信号が継続するようになって
いますので、外部でこれを意識する必要はありません。
【クロック周波数と消費電流】
- PICは動作周波数が低い時には非常に少ない動作電流で動作させること
が出来ます。
そこで良く使われる応用に時計があります。
動作周波数を約32KHzで動作させると、電池で動作させても、1年以上
連続動作させることも可能です。
例として「PIC16C84」のクロック周波数と平均-最大消費電流の関係は
下記のようになっています。
周波数/電源電圧 |
2V
|
3.5V
|
5V
|
30KHz |
15μA-52μA
|
30μA-90μA
|
45μA-0.15mA
|
100KHz |
18μA-80μA
|
37μA-0.15mA
|
56μA-0.2mA
|
1MHz |
20μA-0.2mA
|
72μA-0.4mA
|
95μA-0.7mA
|
10MHz |
0.12mA-1.0mA
|
0.25mA-2.0mA
|
0.35mA-3.0mA
|
この表からも分かるように、PICは電源電圧を低くし、クロック周波数を低く
すると、極端に消費電流を抑制することができます。
従ってバッテリ駆動のような応用でも十分長時間動作が可能となります。
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