【概要】
SMPSファミリはスイッチング電源のコントローラ用として特別に開発された
PICマイコンで、その特徴は下記の3つのモジュールに集約されます。
(1) 高速PWMモジュール
(2) 高速A/Dコンバータ
(3) 高速アナログコンパレータ
これらのモジュールを使って下図のような構成でスイッチング電源の
デジタル化を実現します。
【高速PWMモジュールの特徴】
超高速で高分解能のPWM信号を生成するモジュールで、約1GHzに相当する
速度で動作しています。
その特徴は下記のようになります。
(1) 高速、高分解能
例えば1MHzの周期の場合、10ビットのデューティ分解能となります。
つまり約1nsec単位でデューティのパルス幅をコントロールすることが
できます。これで、リップルの非常に少ない直流電圧を生成することが
可能になります。そのた周期と分解能は下表にようになります。
(2) 7種類のパルス出力モード
電源のトポロジーに合わせて、それに必要なPWM出力を設定するだけで
自動的に出力する。
例えば、下記のようにトポロジーと出力モードを対応させることができます。
(3) 多数のPWM出力を独立に制御可能
PICのピン数により下記のように多くのPWM出力が可能で、しかも、それぞれを
独立の周期、デューティでコントロールすることが可能です。
高速PWM以外に通常の出力コンペアモジュールによるPWM出力も可能となっています。
PICピン数 高速PWM本数 汎用PWM本数 18 4 1 28 4、6、8 1、2 44 6、8 2 64 12 4 80 16 4 100 18 4
(4) 多種のフォルト制御を設定できる
単純なデジタル信号によるフォルト入力だけでなく、アナログコンパレータに出力
もフォルト信号とでき、フォルト時の制御も単純なPWMのオンオフだけでなく、
サイクルごとのPWM制御も可能
例えば、下図のようにすれば過電流制限をサイクルごとにかけることが可能となります。
しかもこの制御にはソフトウェアが介在しませんから、即制限がかかりますので負荷への
ダメージを最少にすることができます。
(5) A/Dコンバータのトリガ機能
PWMの周期に同期させてA/Dコンバータを起動させることができます。
これで、PWMの最適な位置のアナログ信号を取り込むことが可能となります。
【高速A/Dコンバータの特徴】
SMPSに実装されているA/Dコンバータは下図のような構成で
下記のような特徴を持っています。
(1) 高速動作の10ビット分解能
SMPSのA/Dコンバータの特徴は高速であることで、2Mspsという変換速度で
動作します。 つまり、0.5μsecで変換を実行します。
(2) 4チャネル同時サンプリング
4チャネルのアナログ信号を同時にタイミングでサンプルしホールドしますので
同じ時間での電流と電圧を計測することが可能になります。
(3) 多くのトリガモード
A/D変換を開始するタイミングを多くの要因から設定することができます。
・ソフトウェアトリガ(手動モード)
・タイマによるトリガ
・特定チャネルのPWMによるトリガ
【高速アナログコンパレータの特徴】
SMPSに内蔵されているアナログコンパレータは下図のような構成で
下記のような特徴を持っています。
(1) 20nsecという高速動作
比較結果が20nsecで出力されるので、これを過電流保護に使えば、ソフトウェアの
介在なしにPWM出力を制御できるので、負荷のダメージを最少にできます。
(2) リファレンスに10ビットD/Aコンバータを実装、リファレンス電圧源も内蔵
内蔵されたリファレンス電圧源から10ビット分解能のD/Aコンバータで設定した
電圧をリファレンスとして使えるので、任意の比較条件でコンパレータを使うことが
可能となります。