微小電流オシロスコープ


【概要】

1μAからの電流をリアルタイムで計測し、カラーQVGA液晶表示器にグラフで
表示する計測器です。
マイコンなどの間欠的な消費電流を正確に計測する目的で製作しました。
マイクロチップ社から最近リリースされた高速サンプリングが可能なデルタシグマ
A/Dコンバータ「MCP3901」を使って2チャネルの計測をリアルタイムで実行します。

完成した測定器の外観は下図のようになります。


マイコンの消費電流を計測しているところ
1秒間隔で180μAのピークが一定時間
あることが分かります。


【全体構成】

 この電流オシロの全体構成は下図のようになっています。
 表示には2.8インチのQVGAのカラーグラフィック液晶表示器を使い、十分の
分解能でグラフが表示できるようにします。
 この液晶表示器には抵抗膜方式のタッチスクリーンが一体化されていますので
操作はすべてタッチスクリーンで行うことにしました。
 電流を計測するA/Dコンバータにはマイクロチップ社の最新デバイスである
24ビット高速デルタシグマA/Dコンバータを使っています。
 電流を電圧に変換するには、単純に抵抗を使った電圧降下方式としました。
抵抗には1Ωと10Ωを使って、測定感度を2種類できるようにしました。
これをSPIインターフェースで接続しますが、液晶表示器にピンを使ってしまい
ましたので、SPIモジュールは使わずプログラムIOでSPIを制御しています。
 電源はA/Dコンバータだけ5Vが必要で、その他は3.3Vですので、5VのACアダプタ
から電源を供給することにし、A/Dにはフィルタを通して直接5Vを供給し、他は
3端子レギュレータで3.3Vを生成して供給しています。

【MCP3901の概要】

 今回使用したA/Dコンバータの概要を解説します。
仕様は下記のようになっています。

 ・電源        : アナログ部 = 4.5V〜5.5V  デジタル部 = 2.7V〜5.5V
 ・チャネル数    : 差動2チャネル
 ・分解能       : 16または24ビット
 ・変換速度     : 最高31.2kHz (オーバーサンプリング比に依存)
 ・可変ゲインアンプ : 1,2,4,8,16,32でゲインを選択可能 チャネルごと独立
 ・外部I/F      : SPI 最大20Mbps
 ・リファレンス電圧 : 内蔵 2.37V
 このMCP3901の内部構成は下図のようになっています。
2チャネル独立の構成になっていて同時に動作させることができます。
また動作を時間的にずらして変換動作を開始させることもできます。


【設計と組み立て】

全体構成から作成した回路図は下図となります。



組み立て完了した部品面が下図となります。
液晶表示器はサブ基板に組み立てコネクタで接続しています。
A/Dコンバータ部分ははんだ面側に実装しています。


右側がQVGAの2.8インチ液晶表示器
8ビットインターフェースでdsPICから直接
制御しています。



左側中央がMCP3901のデルタシグマ
A/Dコンバータ
アナログ部のパターンは独立させ、1箇所
だけでデジタル部と接続しています。

【使い方】

 操作はすべてタッチスクリーンとしました。そのタッチ部分と機能は下図のように
しました。



 実際にこの電流オシロを使った例が下図となります。これはPIC16で極低消費電力
の時計を作成したとき、その消費電流を計測したものです。
1秒間隔で時刻を更新し、あとはすぐスリープに入っていますので、1秒間隔で実行
するときの電流、約180μAが流れあとはほぼ0に近い電流となっていることが
分かります




これを10倍のゲインで時間も拡大したものが下図となります。
この図から180μAの時間が約20msecで、スリープ中の電流値は約3〜4μAで
あることが分かります。
20msec周期でパルス状に電流が流れているように見えますが、これは商用電源
のノイズによるものと思われます。



【ダウンロード】

電流オシロの関連ファイルは下記からダウンロードできます。

★★★ 微少電流オシロ 基板パターン図
  (OHPフィルムにインクジェットプリンタ等で2重印刷してお使いください)


★★★ 微少電流オシロプログラム プロジェクトファイル一式
 (プロジェクトを再作成してお使いください)

★★★ Eagleファイル ダウンロード

★★★ 液晶表示器サブ基板ファイルダウンロード(2.8インチ)




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