Music Display No1

ちょっと音楽でも聴こうというときに、一緒に目でも楽しめる
ものをということで作ってみました。
液晶のテレビ用モジュールを利用した工作です。




【概要】

今回は一風変わった工作例です。
ステレオなどの音を低音、中音、高音の3種類に分け、それぞれの音の大きさに
よって液晶テレビモジュール画面の色帯の幅を変化させます。
3色の音をそれぞれ赤、緑、青の色に対応させ、音の大きさに比例させて色帯幅
を変化させています。下図のようにそれぞれの音域の音の大きさに比例して色帯
の幅がリアルタイムで変化して行きます。音楽と一緒に画面が踊る感じになります。

無音の時

音が小さい時

音が大きいとき


【全体の構成と動作原理】

今回の製作例の全体構成は下図のようになっています。
まず、色帯を表示する液晶表示器は、多分パチンコ台用のテレビが映せるタイプ
のもので、5インチのサイズです。映像の入力信号はRGB分離タイプで、同期方式
はいわゆる一般のテレビと同じNTSC方式相当になっています。
このテレビ信号はすべてPICから直接制御としています。

入力の音楽信号はオペアンプで約10倍程度に増幅されたあと、スイッチドキャパ
シタフィルタ
のICに入力され、ここで、3つの音域に分解されて出力されます。
この分解された3種の信号をダイオードで整流して直流に変換したあと、PICのアナ
ログ入力ピンに接続して、信号の大きさをPICで計測します。
この計測結果に比例させて、液晶の表示の色幅を変化させています。
音と色の関係は下記のようにしています。

     高音 → 赤で画面上端に配置
     中音 → 緑で画面中央に配置
     低音 → 青で画面下端に配置

PICにはアナログ入力機能がある、PIC16C711を使いました。






【液晶テレビとその制御方法】

今回使用した液晶テレビモジュールは、有名な秋月電子通商さんで入手したもので
多分、パチンコ台などのテレビ表示用のものではないかと思います。
この液晶テレビモジュールの外部インタフェースの電気的仕様については、特に
データも無く、手探りでの調査でしたが、大体テレビのNTSCに沿った形式になって
いるようです。

調べたというか、実際に接続してみた結果の仕様は下記となっています。

電源     :映像制御部 DC5V    バックライト用 DC9V
         消費電力は少なめのようです。(最大100mA程度)
映像入力  :R、G、B独立 最大約1Vp-p  インピーダンスは不明
         この電圧値によって色の濃さが変化するので、画面を見ながら、
         色の濃さが適度になるような電圧値とする調整が必要。
同期     :SYNC 複合同期信号 TTLレベルインターフェース
         NTSCぴったりでは無く、わずかにずれています。(下図参照)
コントラスト :外部に可変抵抗を付加する方式


同期信号(SYNC)とRGB映像信号のタイミングは下図のようになっています。
この図での時間の単位
  Tcy  :1命令実行サイクルを単位とする時間(クロック10MHz)
  Hsync:水平同期期間の単位とする時間

複合同期信号(SYNC)は水平同期信号と垂直同期信号を合わせた信号と
なっています。
RGB各色の表示期間は、音の大きさに比例させて変化しますが、最大は表示
区間の間となります。
また各色の表示区間の信号レベルは、1Vp-p程度にする必要がありますが、
この信号レベルによって色の濃さが変化します。






このタイミングチャートと実際の液晶テレビモジュールの画面表示との関係は
下図のようになります。




【Switched Capacitor Filterの使い方】

今回使用した音声帯域用のフィルタとしては、やや古いICですが、ナショナル
セミコンダクタ社のスイッチドキャパシタフィルタICの「MF5」を使いました。
現在はもう生産中止になっているようですが、他社にも類似の製品があるよう
ですので、代替で使えると思います。
このICは音声帯域の周波数帯では結構便利に使え、1個のICでLow Pass
High Pass、Band Passの3つのフィルタ機能が入っているため、今回のように
高音、中音、低音と分離することがいとも簡単に出来てしまいます。
さらに、加えるクロック信号によって、フィルタリングする中心周波数を可変に
することもできます。
MF5の特性は下図のようになっています。

ここでfclkはスイッチング用クロックの周波数で、最大1MHzまで動作しますので
1/100の周波数がフィルタリング中心周波数になりますから、10kHzまでという
ことになります。
今回は、音楽を中心にしましたので、1kHzを中心にしています。従って、クロック
は100kHzとなっていますが、少し可変にするためボリュームでこの周波数を
変えることが出来るようにしました。
この100kHzの発振回路には、CMOSロジックICである74HC00を使っています。
また今回のフィルタのゲインは「1倍」として、高域の特性を重視しました。


このMF5というICは、±の2電源でも、単電源でも動作させることができますが、
動作可能電圧が、8V〜14V(2電源の時は±4V〜±7V)となっており、PICの
5Vだけでは動作しませんので、9Vの外部電源をそのまま供給しています。
従って、外部供給の9V電源は品質の良いものにする必要があります。
そうしないとフィルタの出力信号がノイズだらけになってしまい、実用的には
使えません。


【全体回路】

全体の回路詳細は下図となっています。 
入力のアンプ部は交流アンプとして音声を必要な電圧まで増幅します。
その出力をフィルタICに入れ、3種の出力として出てくる音声出力を、ダイオード
で整流し、小さ目のコンデンサで平滑して直流にします。このコンデンサを余り
大きくすると、音声の変化への追従が遅くなりますので、画面がスローな変化
になってしまいます。ゆっくりした画面の変化の方が良い場合には、数μF程度
のコンデンサにすると良いでしょう。
直流に変換した音声信号は、そのままPICのアナログ入力ピンに接続します。
ここで音の大きさをA/D変換でディジタル値にしてソフトウェア処理をします。
74HC00はフィルタ用のクロック発振用で、ボリュームにより周波数を少し可変
出来るようにして、画面の変化を好みで変えられるようにしました。
また、最初のアンプのボリュームと、PICのリファレンス可変用のボリュームで
音の大きさによる色帯びの変化幅を可変することが出来ます。
映像出力は、PICの出力ピンをそのまま使いますが、RGBの色用の信号は
電圧レベルが調整できるよう、ボリュームをそれぞれに挿入しています。

下図をクリックすると拡大されます。



回路図とパターン図は下記をダウンロードしてお使いください。
(IVEXのWinDraftとWinBoard用のデータとなっています)

 ★ Music Display No1 回路図
 ★ Music Display No1 パターン図

【製作】

製作は、全部の部品を1枚のプリント基板に実装してしまいましたので簡単です。
部品点数を減らすのに、特にフィルタICとPICが効いています。
3端子レギュレータは基板内の回路用だけでしたら数10mA程度ですから、小型の
レギュレータでもOKなのですが、液晶テレビモジュールへ5Vを供給する場合には
モジュールの種類によっては数100mAを必要とする種類もありますので、念の為に
1Aタイプの3端子レギュレータを使い放熱板もつけています。

基板の全体図
左側コネクタが液晶用コネクタ
右側が音声入力用コネクタ
レギュレータに大き目の放熱板を付けた


使用した液晶テレビモジュール
大型表示画面で良いが
やや色が褪せているのが気になる



液晶モジュールの内部
左側のケーブルはバックライト電源供給用
右側がインタフェース用コネクタであるが
専用になっているのでケーブルを直接はんだ付け


【プログラム概要】

Music Displayのプログラムは、液晶テレビモジュールの表示制御のために
一定時間内での動作が必要です。必ず15.9kHzごとに水平同期信号の処理が
必要ですから、157ステップごとに同じ処理を繰り返す必要があります。
これをソフトウェアで正確に同じ時間で繰り返すのは至難の技ですから、タイマ0
のインターバル割り込みを利用します。
従って、62μsec毎に割り込みが入って来て、しかもこの処理が必ず62μsec
以内に終了するようにプログラムを作ることが必要になります。
といっても余り難しくは無く、意外と簡単にこの時間問題はクリアできます。



  ★ Music Display No1 プログラムリスト




  目次ページに戻る