PICを使ったAC電力コントローラ(ハード編)

 昔のスライダックと同じ機能を持つAC電力コントローラ
 をPICを使って作ってみました。ついでにシリアル通信
 でパソコンからも制御ができるようにしました。


【概要】

 単純なAC電力コントローラは、トライアックを使って簡単に実現できます。
     (AC電力コントローラのページ参照

これと同じ機能をPICを使って実現してみましょう。PICを使うことでパソコンと
シリアル通信で接続してリモコンもできますし、センサーを追加すれば、
AC電力を制御するフィードバック制御も可能になります。

このフィードバック制御を利用すれば、はんだこての自動温度制御や、電動
モータなどの速度制御も可能で、応用範囲は広く考えられます。



全体外観です。
傾斜のついたケースに実装しました。



【基本構成】

(1) AC電力の制御方法
  まずAC100VをOn/Offする必要がありますから、これを何で行うかが課題
 ですが、位相制御を行いたいので高速の切り替えが必要ですからリレーなど
 は使うことができません。ここでは一般的なAC電力コントローラと同じように
 トライアックを使うことにします。
 基本の回路は下図のようにT1,T2間のOn/Off制御をゲート電圧の制御で
 行うことができます。




  この回路で、ゲートに一瞬電圧を加え電流を流してやると、T1,T2間が導通し、
 負荷に対してAC100Vが加わります。そしてAC100Vの電圧の正弦波が0Vを
 横切るとき、トライアックはOffとなります。
  これを正弦波の半サイクル毎に繰り返せば、正弦波の一部が切れた形の
 下図のような交流が負荷に加わることになります。
  この負荷に加わる交流の電力は、波形の面積に比例しますから、Onとする
 位置を可変してやれば電力を可変することができます。






(2) 絶縁方法
 このトライアックのゲートを制御するためには、T2に加わる電圧より数V程度
 高い電圧を加える必要があります。
 しかしT2に加わる電圧は、制御する相手がAC100V以上とすれば、これと同じ
 電圧を扱う必要が出ることになります。
 従って、この高電圧を、DC5Vで動作するPICから制御するためには工夫が必要
 です。つまり電気的に絶縁する必要があるわけです。

 この絶縁には、フォトカプラを使います。しかも、トライアックは両極性を持って
 いますから、これに対応できるよう、フォトカプラにトライアックを組み込んだ
 フォトトライアックを使います。
 使用したのは東芝のTLP560というフォトトライアックです。

 基本回路は下図のようにします。これで、PICからフォトトライアックの発光
 ダイオードをOnとすれば、出力のトライアックが制御用トライアックのゲートに
 トリガー用の電圧を加えることができます。さらに出力がトライアックであることに
 より、正弦波のプラス側でもマイナス側でも同じように動作します。
 C4とR5の直列回路はトライアックが発生するスイッチングノイズを抑制するため
 のスナバー回路と呼ばれるものです。






(3) 正弦波への同期
  次の課題は、位相制御をするためには、負荷の交流の正弦波に同期した信号
 が必要です。ここでもフォトカプラを利用します。下図のような回路を使います。




 この回路ででフォトカプラの発光ダイオードに負荷の交流信号を流すと、出力側
 トランジスタ出力には、下図のような信号が現れます。つまり、正弦波の電圧が
 一定値以上あれば、トランジスタはOnとなって出力は0Vとなりますが、交流が
 0Vを横切るとき(これをゼロクロスと呼ぶ)には、発光ダイオードが消灯しますから、
 出力は5Vとなります。これで、交流のゼロクロスのタイミングに同期した信号を
 得ることができます。しかも電気的に絶縁されていますから、PICに直接出力を
 接続することが可能になります。
  このゼロクロスのパルス信号をPICのRB0に加えて外部割込み信号とします。
 これでPICのプログラムを半サイクル毎に起動させることができることになります。





 しかし、ここにひとつ問題があります。発光ダイオードに流す電流はわずか
 数mAです。ここに直接AC100Vを加えるのはちょっと危険な感じがします。
 そこで、PIC用の5V電源を供給するためと共用で、電源トランスを使うことに
 しました。このトランスで降圧した交流を加えることにします。
 PIC用の電源回路を組み合わせて下記のような回路で実現しました。
 PICの回路に必要な電源容量は10mA程度ですから、小さな電源トランス
 で十分なので、プリント基板用の電源トランスを使うことにしました。




【全体回路構成】

 以上のようなポイントを検討した結果の最終的な全体回路は下図のように
なりました。せっかくPICを使うのですから、液晶表示器と、RS232C、さらに
ボリュームのアナログ入力回路も追加して、いろいろ遊べるようにしました。
アナログ入力にセンサー用オペアンプ回路を追加すれば、自動制御回路も
これで構成が可能になります。





下記にIVEXのWinDraftとWinBoard用のファイルがあります。ダウンロードして
お使いください。
ビットマップ形式のパターン図は適当な縮尺で印刷してお使いください。


★ PIC活用ACパワーコントローラ 回路図とパターン図

★ PIC活用ACパワーコントローラ パターン図BMPファイル




【制御基板の外観】

 下記写真がこの制御基板の外観です。左上側からAC100Vが加えられ、
電源トランスとその下部が5V用電源と同期信号作成用フォトカプラです。
上側にfフューズと、放熱フィンを付けた負荷制御用トライアック、フォトトライ
アックが並んでいます。
中央がPIC16F873/876で、その右側がRS232CのレベルコンバータICと
DSUBコネクタです。
下部には位相可変用のアナログ入力ピン、セラミック振動子、表示用の発光
ダイオードが並んでいます。PICの上部にあるコネクタは液晶表示器用です。




ここで使った負荷制御用トライアックは、東芝製のSM12GZ47で、AC100Vで
5A程度つまり500W程度の負荷の連続制御が可能です。


【ケースへの実装と外観】

AC100Vという高電圧を扱うので、しっかりとケースに実装します。負荷への
出力はACプラグ用のソケットとして、ACプラグがそのまま挿入できるように
します。下記写真がケースへの実装状態です。


ケースにはタカチのTS-1という測定器タイプ
のちょっと傾斜のついた箱を使いました。
上面で操作表示ができるようにし、RS232C用の
DSUBコネクタが側面に出るようにしました。




背面には、出力用のACソケットが
あるだけです。






基板は直接シャーシにカラーで浮かして
固定しています。
DSUBコネクタが基板直付けなので
側面に直接出るようにします。




液晶表示器は2mmのねじで直接パネルに
取り付けました。そして基板との接続は
コネクタとしましたので、ちょっと長めの
ケーブルで伸ばしています。






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