定電圧、定電流電源の製作

 実験室用の定電圧、定電流電源を作りました。
 メータの代わりにPICを使って液晶表示器に、現在状態
 を表示するようにしました。


【概要】

実験の最中に、ショートしても一定の電流以上は流れないような定電圧の電源が
欲しいと思い作ってみました。
出力電圧は0Vから12Vまで可変でき、出力電流は最大0から1Aまで設定できます。
出力電圧、電流、設定電流などの現在状態を、液晶表示器に常時表示します。
外観は下記のようになっていて、電圧設定と、最大電流設定が右のつまみで出来ます。
また現在状態を液晶表示器に常時表示しています。この表示制御にPIC16F873/876
を使っています。


出力端子左横の発光ダイオードは、
出力電流制限が始まっていることを
表します。
最大出力は、0〜12V 1A です。


【基本構成】

まず、全体構成は下図のようになっていて、定電圧、定電流の制御部は、MOS FETで
行います。基本的な動作は、すべてハードウェアで制御しています。
 PICが実行するのは、計測と値を変換して表示することだけです。
供給元の15V、1.6Aの電源は、24WタイプのACアダプタをそのまま使っています。







 定電圧、定電流の制御は、下図のような構成で実現しています。
まず、出力電圧制御は、出力電圧値と、設定値をオペアンプで比較し、同じ値になるように、
NチャネルMOS FET側で制御しています。
電流制御は、その前にあるPチャネルのMOS FETで行っていて、1Ωの抵抗の両端の電位差
と、電流設定用電圧とをオペアンプで比較し、一定の電流以上になった場合には、設定されて
いる最大電流値以上にならないように、出力電圧を下げる動作をします。
ここでその前にある2個のダイオードは、FETのゲート電圧に対するバイアス電圧を得るため
です。
つまり、PチャネルMOS FETのソースに対して、ゲート電圧が2V程高い電圧になるようにして、
1Ωの抵抗のドロップが0V付近でもきちんと電流制御ができるようにしています。
このダイオード、1Ω、Pch MOSFET、Nch MOS FETの間を、最大1Aの電流が流れますので、
それぞれに熱対策が必要です。





PICへの計測データは下記のような内容としています。

1.CH0 電流制限電圧
  上図のQ1のゲートに加わる電圧を1kΩと3.3kΩの抵抗で分圧して入力して
  います。従って、0−3.8Vの電圧としてPICに入力されます。

2.CH1 負荷電流値
  実際に流れている電流値を上図のR1の電圧降下値で測定しています。
  電位差をそのまま入力していますが、0アンペアの時のオフセット調整用の
  可変抵抗を追加しています。

3.CH2 最大電流設定値
  最大電流設定用の可変抵抗の値が0−5Vなので、そのまま入力しています。

4.CH3 出力電圧値
  現在の負荷出力の電圧値を、抵抗で分圧して入力しています。
  フルスケール調整用の可変抵抗をオペアンプに追加しています。




【全体回路構成】

上記の仕様を満足させた回路は下図のようになります。
左半分が定電流、定電圧を制御するハードウェア部分で、2個のMOSFETが、その制御を
行っています。
右半分は、PICを中心にした表示制御回路で、各部の計測ポイントの電圧値をA/D変換して、
スケール変換をしたあと、液晶表示器に出力しています。
特に、電源部は15Vで動作していますので、その計測を行うためのオペアンプも15V系で
動作させています。しかし、PICは5V系ですので、A/D変換入力は最大5Vにする必要が
あります。
そのためオペアンプの出力を0−5Vに設定した上で、さらにPICを壊さないようにオペアンプ
に出力をダイオードで5Vにプルアップしています。これで最悪6V程度でオペアンプの出力を
クリップすることが出来ます。(D3、D4)

電流制限を検出するための基準電圧を、下図のR7の2kΩの抵抗で作るため、常に一定の
電流をこの抵抗に流す必要があります。このため、Q2のFET 2SK439で定電流回路を
構成しています。









★回路図とパターン図のファイルは下記です。IVEX社のWinDraftとWinBoardでお使い下さい。

  ★回路図とパターン図
  ★パターン図のBMPファイル


【制御基板の外観】


12V 1Aの出力の制御に耐えられるよう
大き目の放熱板を取り付けています。
実力的にはちょっと1Ωの抵抗とダイオードが
熱くなりますが、2A程度までは耐えられます。


放熱板には、2個のMOSFETと1Ωの電流
検出用セメント抵抗の発熱も放熱するよう
接触させています。


放熱板周りの詳細です。
セメント抵抗は熱伝導ゴムを間に挟んで
放熱板に接触させています。
放熱板には、2個のMOSFETが固定
できるようにタップを切っています。



PIC周りの部品実装状態です。



プリント基板です。右側の1Aの電流が流れる
部分のパターンはできるだけ太くするように
します。





【ケースへの実装と外観】


全体レイアウトは、上側が電源のスイッチング
レギュレータです。24WタイプのACアダプタ
のケースをはずして使いました。
出力は15V 1.6Aです。
下側が制御基板です。


スイッチングレギュレータの取り付け状態です。
基板に2箇所穴をあけ、ねじで固定しています。
出力ケーブルは途中で切断して使い、入力
はACプラグ用の接触端子に直接はんだ付け
しています。


前面パネルの実装状態です。
狭いので正確な穴あけをしないと取り付け
出来なくなってしまいます。
電源表示用LEDへは5V電源から空中配線で
470Ωの抵抗経由接続しています。

  液晶表示器のバックライト用電流制限抵抗は47Ωを使いました。


【プログラム概要】

この定電流定電圧源のプログラムは計測を行っているだけですので
簡単です。
0.5秒の一定周期で4チャネルのデータを計測し、データのスケール変換を
してから、液晶表示器の指定位置に4つの値を表示しています。
CCS社のC言語で作りましたので、液晶表示器への出力はprintf文だけで
終わっています。
また浮動小数点数のスケール変換の演算もC言語ならそれぞれ1行で
記述できてしまいます。

このプログラムのソースとHEXファイルは下記にあります。
ダウンロードしてお使い下さい。

★プログラムソース(C言語)

★プログラムHEXファイル




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