便利なワンチップLiイオンバッテリチャージャ

 LiイオンやLiポリマーの電池を充電するために
 専用に作られたワンチップチャージャを使用して
 みました。数個の部品で結構面倒なリチウム電池
 を充電できるので結構便利に使えそうです。


【概要】

 Microchip社のアナログ製品である、電源用ICの中に、ワンチップでできた
リチウムバッテリ用の充電制御用ICがいくつかあります。
今回その中でも、通常の電源から充電できるタイプのものと、USBコネクタから
充電できるようにしたものと2種類を使ってみました。
実に簡単でしかも小型に、比較的難しいリチウム充電池の充電器ができてしまうので、
結構便利に使えます。

今回使ったのは、下記の2種類のICで、入手はBuyMicrochipで直接注文しました。

 MCP73861 : 汎用の充電制御ICで最大0.1Aから1.2Aまで流せます。
 MCP73855 : USBコネクタから充電するタイプで最大100mAから400mAまで流せます。

外観は下記の写真のようなもので、上側がMCP73861のSOICパッケージ
下側の小さな2つがMCP73855のMFパッケージです。

MFパッケージにはピンが外側に出ておらず
底面にピンがあります。
かろうじて側面にピンが見えています。


【MCP73855/61の概要】

 リチウムイオン電池の充電用に用意されたワンチップICの2種類のものに関する
仕様は下記のようになっています。
MCP73855はUSBコネクタから供給できるように入力電源が5Vになっていますので、
電源は限定されていますが、MCP73861の方は、汎用として入力電源電圧が広範囲と
なっています。

型 名 MCP73861 MCP73855
入力電圧 4.5V 〜 12V 4.5V 〜 5.5V
(USBコネクタの5V)
充電用出力電圧 4.1V ± 0.021V  (Vset端子=Vssの場合)
  または
4.2V ± 0.021V  (Vset端子=Vddの場合)
最大充電電流 0.1A 〜 1.2A
(PROG端子により設定可能)
0.1A 〜 0.4A
(PROG端子により設定可能)
レギュレーション 標準 0.025%  最大 0.25% 標準 0.021%  最大 0.25%
温度制御 外部サーミスタで可能 機能なし
イネーブル イネーブル端子(EN)により制御可能)
パッケージ QFN(ML)  SOIC(SL) DFN(MF)

ピン配置はパッケージのよって異なりますので注意が必要です。







 この専用ICの充電動作のパターンは下図のようになっていて、全体が3つの段階に
分かれています。このパターンで充電を自動制御してくれますので、外部からの制御は
何も必要ありません。(温度制御をしない場合のパターンです)
図のように電圧と電流を監視しながら制御しますが、タイマ機能も内部に持っていて、
電圧や電流が期待通りにならなかった場合にはタイマの時間で制御します。

第一段階
 まず電源がオンとなったときバッテリ電圧が、2.8Vより高い場合には、この第一
 段階を省略します。 低い場合には、この第一段階を実行します。
 少しの充電電流を流してみてバッテリ電圧が上昇するかどうかをチェックします。
 これでバッテリが正常かどうかを判定します。
 もし一定時間経っても電圧が上昇しなければ異常として充電動作を終了します。
 この時間は、標準では60分±15分となっています。

第二段階
 バッテリが正常と判定されたら、設定された最大電流の一定電流で充電をします。
 一定時間たっても電源電圧が4.2Vにならない場合には強制的に第三段階に
 移行します。この時間は標準1.5時間±0.4時間となっています。

第三段階
 充電が満充電に近づいて電池電圧が4.2Vになったら、今度は充電を定電圧で
 行うように切り替わります。次第に電流が減少し、規定電流以下になった時点で
 充電を終了します。
 一定時間経っても規定電流以下にならなかった場合には、強制終了とします。
 この時間は第二段階から合計で3時間±0.8時間となっています。




【回路構成】

 それぞれの試作回路は下図のようにしました。
まずMCP73861の回路は、携帯型の汎用充電器という使い方ができるように
考えました。温度センサーが追加できるようになっていますが、今回は使わない
ことにしましたので、THREF端子の電圧の1/3にして加えています。この範囲で
あれば温度制御は何もしないことになります。
PROG端子に可変抵抗を追加して、充電最大電流が可変できるようにしました。
発光ダイオードで状態が表示されるようになっていて、下記のような状態表示と
なります。
(注)回路図はSOICタイプのピン配置です。
   VddはVccに VssはGNDと名称を変更しています。





状態 STATE1
赤色LED
STATE2
黄色LED
充電中 オン オフ
充電完了 点滅 オフ
充電異常 オフ オン
温度異常 オフ 点滅


 次にMCP73855の回路です。USBケーブルを使うこととして考えました。
PROG端子はスイッチにして01.Aか0.4Aを切り替えるようにしました。
このときのLEDの表示は、充電中は点灯で充電終了で点滅ということになります。





【外観】

 実際に製作した充電器の外観です。
まずMCP73861を使った汎用の充電器です。


左側にACアダプタを接続して供給電源とします。
可変抵抗は最大充電電流の設定用です。


SOICパッケージですがピン間が広いので
はんだ付けは易しいでしょう。
充電中はかなりICが熱くなるのでパターンを
できるだけ広くして放熱させる必要があります。

次がMCP73855を使ったUSB経由の充電器です。

電源供給はUSBのBタイプコネクタで
直接USBケーブルで接続するようにしました。
スイッチは最大充電電流の切替用です。


ICが非常に小さいので取り扱い注意です。


MCP73855はMFパッケージという非常に小型のパッケージなので、パターンも
10mil(0.25mm)幅にしかできません。
ピンが外部に出ていないのではんだ付けにはちょっとこつが必要ですが、側面に
ちょっとだけピン部分がありますので、そこをパターンとはんだ付けします。
10ピンだけなので何とかなるでしょう。

 実際に使ってみると0.4Aの充電電流では、かなり熱くなりますので、パターンで
放熱できるようにピンから出たところでパターンを広めにする必要があります。
またICの底面が放熱フィンとなっていますので、ここにパターンを配置して、外側に
広めのパターンを配置して放熱するようにする必要がありそうです。



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