【オペアンプとは】
オペアンプとはOperational Amplifierを略した言葉で、電圧を増幅する素子です。
増幅回路を構成した場合、外部に接続する抵抗の比だけで増幅度合を制御できる
ため再現性が高く使いやすい素子となっています。
オペアンプの回路図記号は下図のように表現します。
電源ピンの記述は省略されることもあります。
図のように2つの入力ピンと1つの出力ピンを持つアナログ素子で、入力ピンには
プラス側とマイナス側がある「差動入力」となっていて、重要な機能の差異なので
回路図でも必ず+と−で区別します。
基本の機能は2つの入力ピンの差の電圧を増幅して出力するという差動増幅動作
になります。その増幅度合を増幅度と呼び、通常数万倍以上となっています。
+ピン側の方の電圧が高ければ出力もプラス側となり、−ピン側の電圧が高ければ、
出力はマイナス出力となります。逆に入力電圧が数Vと高くても、+ピンと−ピンの
間の電圧に差が無ければ出力は0のままとなります。
ところが、このままでは、このオペアンプの増幅度が数万倍以上と無限大に近い
大きさがあるため、そのまま使ったのでは、ほんのわずかでも入力ピン間に電圧差
があると、出力はプラスかマイナスの最大値に張り付いてしまい、実用的に使える
アンプとはなりません。
しかし、この増幅度が無限大に近いということが大きなメリットとなる方法があります。
これが「ネガティブフィードバック」という方法です。日本語では「負帰還」といいます。
このネガティブフィードバックを利用してオペアンプを使うのが基本的な使い方です。
【オペアンプの内部構成】
PIC16F1ファミリには2個のオペアンプ(OPA)が実装されているものがあります。
それらのオペアンプの構成は下図のようになっています。
すべてのピンが外部ピンに接続できるようになっていますので、独立のオペアンプ
ハードウェアとして動作させることができます。
プラス入力は、設定により外部ピン以外にD/Aコンバータ出力か定電圧リファレンス
に内部で接続することができますので、オフセット電圧として使うこともできます。
さらにマイナス入力は内部で出力に直接接続することができますからユニティゲイン
の非反転増幅回路が簡単に構成できます。
出力は「Rail to Rail」ということになっていますので、ほぼ0VからVDDまで振れますが、
入力はVDDより0.5V程度低いところが限界のようです。
このオペアンプの電気的特性はデータシートから下表のようになっています。
GBWPが4.3MHz程度ですのでゲインを大きくすると実際のバンド幅は1/ゲインに
なりますから、あまり広いバンド幅は確保できなくなります。
オフセットも数mVありますから高精度の測定をする場合には誤差になりますので
注意が必要です。
【オペアンプ制御レジスタ】
オペアンプ動作を設定するための制御レジスタの詳細は、下図のようになっています。
このレジスタでオペアンプを使う時の設定手順は次のようにします。
@使うオペアンプの3つのピンで外部接続するピンをANSELxレジスタで
アナログピンとする
ATRISレジスタで入力モードとする(OPAの出力ピンも入力モードとする)
BOPAxCH<1:0>ビットでプラス側入力を選択
COPAxUGビットでマイナス側入力選択
DOPAxSPビットの設定で、高速モードか低速モードを選択
低速モードにすれば周波数特性は低くなりますが、
消費電流を抑制することができます。
EOPAxENビットを有効化して動作開始
プログラムに関係なく独立のハードウェアとして動作します。
【オペアンプの使い方】
PICマイコンに内蔵されているオペアンプは、基本的に単電源で使うことになります。
このためオペアンプとしての使い方には単電源という制限が付きます。
実際のおlぺアンプを使うときの構成は下記のようにします。
(1) 基本の直流増幅回路
単電源ですから直流を扱う場合には非反転増幅回路として使うことになります。
この場合のゲインは図のように1+R2/R1となります。
この場合入力可能な信号の範囲が「約0V〜VDD-0.5V」 程度となります。
つまり完全に0Vから電源電圧の範囲とはなりません。
(2) ユニティゲインアンプ
ゲインが1のバッファアンプの構成の場合は、PIC内部でオペアンプの
出力とマイナス入力が直結できますので、ピンも使いませんから効率的に
なります。この回路はインピーダンスを下げてアナログ信号の駆動能力を
アップするために使われます。
(3) オフセット付き直流増幅回路
直流でプラスマイなす両方を扱いたい場合などには、下図のようにプラス
側入力にオフセットを加えて0V位置をずらした反転増幅回路として使います。
(4) 交流増幅回路
交流信号を扱う場合には、(3)のオフセット付きにして使います。
入力にコンデンサを挿入して直流をカットし交流だけ通過させるように
して使います。このC2とR1//R2でハイパスフィルタを構成することに
なりますから、コンデンサの値を扱う周波数によって選択する必要が
あります。
(5) 差動増幅回路として使う
オペアンプを差動入力回路として使う場合の例です。R0の電圧降下で
電流を計測するような場合、電圧差だけを取り出すことができます。
ただしこの場合、被測定側の電源電圧もオペアンプの電源電圧V+以下で
ある必要があります。
(6) 定電流回路の構成
定電流回路は外部トランジスタと組み合わせて構成します。
電流が大きな場合には、ダーリントン構成などにして電流増幅率を
大きくする必要があります。R1はオペアンプの過負荷防止用です。
(7) 具体例
よく使われている半導体温度センサを接続した場合の例で、直流増幅回路
として使っています。
これで温度センサの20mV〜0.5Vの電圧を、0.16V〜4.0Vに増幅し、A/Dコンバータ
の計測分解能をアップさせています。8倍の増幅度を可変抵抗で調整できるように
して部品誤差を補正できるようにしています。
オペアンプの出力とA/Dコンバータの接続は同じピンでできますので有効に使えます。
(8) ホールセンサとのインターフェース回路
ホールセンサはブリッジですので定電流を流す必要があります。この定電流回路
と出力電圧の増幅回路に内蔵オペアンプを活用した例です。大きなゲインが必要
ですのでR6、R7が大きな値となっています。このためC2によりノイズ対策をしています。
ゲインを大きくしましたから、この増幅では、周波数帯域は数10kHz以下となります。
(9) マイクアンプの例
MEMS構成のマイクを使った場合の例で、マイクの出力電圧が増幅されて
出力されていますので、10倍のゲインの交流増幅回路で十分の出力電圧
が確保できます。周波数帯域はMax20倍のゲインですから100kHzは確保
できます。この出力を高速A/D変換して音に追従させます。