【概要】
最近は、ICも多ピンで小型化されるため、非常に狭いピン間でできています。
これらのICをアマチュア工作で使うためには、何とかして自分ではんだ付け
したくなります。
小型多ピンのフラットパッケージICのはんだ付け方法を、いろいろ試行錯誤
した結果、これなら意外と易しく実現できそうなので紹介しておきます。
《実際に取り付けた例》
PIC18F452のフラットパッケージ RS232用ICのフラットパッケージ
【手順】
まず、フラットパッケージICのはんだ付けの手順をざっと一巡してみます。
(1) フラックスとフラックス洗浄剤などを用意する
(2) プリント基板を作成する
(3) 予備はんだをする
(4) ICの位置合わせ
(5) ICの対角の2ピンを仮はんだ付けして固定する
(6) フラックスを塗布後全ピンはんだづけ
(7) ブリッジの修正等と確認
(8) フラックスの除去
【事前準備するもの】
まずはんだ付けする際に必要になるもので、下記を購入しておきます。
・プリント基板用フラックス(無洗浄タイプ)
・プリント基板用フラックス洗浄剤
・綿棒
・細めのヤニ入りはんだ
購入するものは下記のような外観で、それぞれビン入りで、ふたに刷毛がついて
いてそれで塗布することができます。
綿棒は、フラックスを除去する際に、刷毛で洗浄剤を塗布したあと、この綿棒で
フラックスを拭き取るのに使います。これが意外ときれいに取れる方法です。
左側がフラックスで右側が洗浄剤です。
いずれも500円程度です。
フラックス Goot社 BS-75B
洗浄剤 Goot社 BS-R20B
各ビンのふたには刷毛がついていますので
これで塗布します。
綿棒はフラックスを除去するときに
洗浄剤を塗布後綿棒で拭き取ります。
【プリント基板の作成】
フラットパッケージを実装するためにはプリント基板が不可欠ですが、自作
するには、フラットパッケージのランドパターンが必要になります。
パターン作成ソフトを使えば、この辺りは簡単に実現ができます。逆に使わないと
自作はほとんど不可能です。下記のようなパターン作成ソフトが便利でしょう。
・IVEX社 WinBoard
80ピンまではフリー 350ピンから市販あり
詳しい使い方は、「WinBoardの使い方」のページを参照して下さい。
・PCBE
有名なフリーソフト ランドの作成から必要ですが、自由にできます。
使い方は、「PCBEの使い方」のページを参照して下さい。
・Eagle
100x80mmまでフリーウェア オートルータまでついた本格的なもの
「e電子工房」で使い方を詳しく説明しています。
最近の0.65mmピッチ(0.026インチ)のSSOPパッケージや0.5mmピッチの
TQFPパッケージでは、パターン幅を0.3mm(15mil)か0.2mm(10mil)にする必要が
あります。このパターン幅でもサンハヤト製の市販感光基板で十分できますので、
特に基板作成上の問題はありません。
感光基板を使ったプリント基板の作り方は「プリント基板の自作法」のページを
参照願います。
【ICの実装方法】
さていよいよフラットパッケージを実際にはんだ付けする方法です。
下記の順に進めれば比較的きれいに実装が実現できると思います。
(1) ICランドパターンに予備はんだをする
市販感光基板でレジスト無しの状態ではんだ付けしますので、ICのランドに
事前にはんだメッキをしておくと効率よくはんだ付けができます。
部品の最初にフラットパッケージのICを取り付けたほうが作業しやすいですし
フラックスの洗浄もきれいにできます。
この手順は下図のようにします。
まずプリント基板用フラックスをICランド
に塗布します。
あまり広がらないようにした方が良いの
ですが自然に広がってしまいますので
これは止む得ないでしょう。
このパターンで0.026インチピッチの15mil
の線幅です。
ICのランド部にはんだメッキをします。
フラックスのお陰で、はんだをつけた
こて先を当てると、スッとはんだが広が
っていきます。
フラックスがあると、はんだが盛り上がら
ないのできれいなメッキができます。
(2) ICの位置を合わせ仮止めする
ICを向きを間違えないようにしてランド位置にぴったり合うように配置し、
対角線上にある2ピンをはんだ付けして仮止めします。
仮止めは、こてを軽くピンに載せて押すだけでできます。
位置を合わせて対角の2ピンを
仮止めのためはんだ付けする。
この状態ではまだ簡単に変更が
できるのでルーペで拡大しながら
位置の確認と修正ができます。
(3) フラックスを塗布後、全ピンはんだづけ
位置のずれを確認できたら、この状態でフラックスを全ピンに塗布します。
軽く塗布すれば、ピンとパターンの隙間に入り込みますので十分です。
フラックスを塗布したら、細めのヤニ入りはんだをピンにあてて、こてで
はんだを溶かし込んでいきます。(0.8φ程度のはんだが良いでしょう)
ブリッジは無い方が良いですが、ブリッジしても構いませんので
はんだを溶かしながらはんだ付けします。ブリッジは後で修正します。
こての先で1本ずつはんだ付けしていけば、フラックスの効果でほとんど
ブリッジはしないと思います。
全ピンをはんだづけする。
フラックスのお陰でほとんどブリッジ
しないではんだ付けができます。
この例では、故意に多目のはんだに
しています。
ブリッジは後で修正します。
(4) ブリッジの修正と確認
全ピンのはんだ付けが完了したら、 基板を縦にして、ピン側を下にしながら
再度はんだを溶かしなおして余分なはんだを取り除きます。
このとき、こて先を、水を含ませたスポンジできれいにしながら行うと、溶けた
はんだがこて先に移って、ピン間でブリッジしているはんだが取り除かれます。
最後に、ルーペで拡大してブリッジや、接続状態の確認をします。
ピン毎にはんだを再度溶かしなおして
きれいにしていきます。
このときブリッジもできるだけ取り除きます。
フラックスを使うとはんだが良く表面に
広がるようになるのでブリッジが取れやすく
なります。
これでもブリッジが取れないときは、
はんだを溶かしながら、
はんだ吸い取り器で余分なはんだを
吸い取ります。
吸い取り器は先の細いものがあると
効果的に取り除けます。
はんだ吸い取り線も使えますがピンを
曲げやすいので余りお勧めできません。
(5) フラックスの洗浄除去
はんだ付けが完了したら余分なフラックスを洗浄して除去します。
洗浄剤を刷毛で十分塗ったあと、綿棒でこすり落とします。
刷毛でフラックス洗浄剤を
塗布します。
綿棒を使ってフラックスを
こすり落とします。
これで結構きれいに取り除けます。
綿棒側に洗浄剤を染み込ませて
拭い取る方法もベターです。
周りの部品実装前に除去作業を
した方がやりやすいですね。
(6) 完成
これで取り付け完了です。
意外ときれいにはんだ付けができます。
ポイントはフラックスの使い方で、はんだがべた付いて取れにくいときは
フラックスを使うと水のように広がって扱いやすくなります。
取り付け完成
周りのパターンにはんだが流れますが
これは気にしないことにします。