【トルクとは何か】
モータなどの選択の際に必要になるパラメータの中に「トルク」
というものがあります。
このトルクとは、回転力とも表現できますが、物体を動かそう
とした時に必要とする力を表現したものです。
物体を動かす時の必要なトルクは下図のように加速期間と
等速運動期間で異なっています。
【実際の概算トルクの求め方】
下図の様な三輪車を実例として、動輪の軸に必要なトルクを
求める方法を説明します。
加速期間トルク
Tm=Ta+L
等速運動期間
Tm=L
Tm:動輪軸の総トルク
Ta:加速トルク
L :起動摩擦負荷トルク
これを上図の具体的な物体で概算を求めるには下記の様にします。
Ta=J/g × 2πf/t Ta:加速トルク(kg・cm)
J:負荷慣性モーメント(kg・cm2)
g:重力加速度(980cm/sec2)
J=WD2/8 f:動輪の等速運転速度(回転/sec)
t:加速期間の時間(sec)
W:物体の全重量(kg)
L=μWD/4 μ:摩擦係数(0.09)
D:動輪の直径(cm)
【実際の例】
下記の様な実際の三輪車で求めてみます。
W:2kg D:5cm f:2回転/sec t:0.5sec
J=2×5×5/8=6.25(kg・cm2)
Ta=6.25/980×6.28×2/0.5=0.16(kg・cm)
L=0.09×2×5/4=0.225(kg・cm)
これから加速期間と等速期間のトルクは下記となります。
Tm(加速)=0.16+0.225=385 (g・cm)
Tm(等速)=225 (g・cm)
【モータの選択法】
上記の実例に適当なモータはどうなるのでしょうか?
まず必要な起動トルクは、385(g・cm)ですが、安全率を1.5倍
くらい見て、600(g・cm)以上とします。
前ページのモータのカタログから見ると、起動トルクが600(g・cm)
を超えるのは、RS540だけです。しかしこれではモータ自身が大きすぎ
バッテリやモータの重量を加味すると2kgの全重量をはるかに超えて
しまいます。
さてではどうすれば良いのでしょうか?
そうです、ギヤを使います。動輪軸にギヤを付け、そこで減速して
モータを付けます。そうすれば、モータのトルクをギヤ比倍にする
ことが出来ます。
簡単に入手できる田宮模型のハイパワーギヤセットを使うと、モータ
はRE260でギヤ比が40:1か65:1にできますから、40:1として
RE260の起動トルクは50〜90ですから、ギヤ後は2000から3600
までとすることができますので、必要な600(g・cm)は十分駆動出来
る計算になります。
また等速運転時にはRE260の適正負荷トルクが10〜15(g・cm)
ですから、40倍して、やはり400から600(g・cm)のトルクが出せる
ので、必要な225×1.5倍=338(g・cm)を十分に駆動出来ます。
しかし、加速期間の最終段階頃には、モータの適正負荷時のトルクで
駆動することになる訳ですから、600(g・cm)のトルクを出すためには、
モータの適正負荷時のトルクとして15g・cm以上のトルクが必要です
から、1.5Vで駆動するのは一寸苦しいことになります。
従ってモータに加える電圧は3Vということになります。
つまり、モータの出せるトルクは、速度が上がると反比例して下がること
に注意が必要です。
回転数は大丈夫でしょうか?
適正負荷時のRE260の回転数は、5000〜10100ですから
この40分の1は、125〜252回転/分ですから、2回転/sec
つまり120回転/分を十分カバーすることが出来ます。
この関係を図で表したのが下図で黄色の範囲が必要とされるトルクと
回転数の範囲となりますが、これがモータの適正付加動作の範囲内
に入っていれば問題無く駆動できることになります。
【ギヤセット例】
実際に我々が工作で使うギヤセットは大部分、田宮模型のものだと
思います。下表がその規格です。
ギヤ名称
低速ギヤ比
高速ギヤ比
使用モータ
ハイスピードギヤボックス 11.6:1
18:1
RE260
RE140ハイパワーギヤボックス 41.7:1
64.8:1
RE260
RE140ウォームギヤボックス 216:1
336:1
RE260
RE140遊星ギヤボックス 4:1〜400:1まで14種
RE260
RE140