DCモータの可変速制御法

【DCモータの可変速制御】

DCモータの速度を連続的に変えたい時にはどうすれば良いのでしょう
か?基本的には、DCモータに加える電圧を変えれば速度は変化します。
単純にモータのコイルに流れる電流と速度が正比例しますから、下図の
様にしてモータの駆動電圧を変化させれば速度が可変に出来ることに
なります。


この駆動電圧を変化させる方法にアナログ方式とパルス幅変調方式の
2種類の方法があります。
下記はそれぞれの方式と特徴です。


【アナログ方式の可変速制御】

直接駆動電圧そのものを変化させるもので、基本回路は下図の様にし
ます。



つまり、トランジスタで電圧ドロッパを構成し、コレクタ・エミッタ間のドロッ
プ電圧を変えることでモータに加わる駆動電圧を可変とします。
この基本原理のため、ドロッパ電圧がそのまま熱となってロスとなること
になり、特に低速にする時、電力使用効率が悪くなってしまいます。
このロスで発生する熱対策のため、大きな放熱版を必要とすることから
全体が大型となってしまいます。
しかし、小型モータでしかも速度の可変幅が小さくて良い場合には
ロスを小さくすることができるのと、制御回路が簡単であることから良く
使われています。



【パルス幅変調(PWM)方式】

PWM方式は、結果的には駆動電圧を変えているのと同じ効果を出して
いるのですが、その方法がパルス幅に依っているので、パルス幅変調法
PWM(Pulse Width Modulation)と呼ばれています。
具体的には、モータ駆動電源を一定周期でOn/Offするパルス状とし、その
パルスのデューティ比(On時間とOff時間の比)を変えることで実現していま
す。これは、DCモータが早い周波数の変化には、機械反応をしないことを
利用しています。
基本回路は下図の様にし、図中のトランジスタを一定時間間隔でOn/off
すると、駆動電源がOn/Offされることになります。




このパルス状の電圧でDCモータを駆動したときの、実際のモータに加わる
電圧波形は下図の様になり、平均電力、電圧を考えれば、見かけ上、駆動
電圧が変化していることになります。


ここで重要な働きをしているのが、上記回路図にあるダイオードで、普通の
電源用のダイオードを使いますが、その動作内容からフライホイールダイ
オードと呼ばれています。
つまり、トランジスタがOffの間、モータのコイルに蓄積されたエネルギーを
電流として流す働きをします。(回生電流と呼ぶ)
この状態を図で表すと下図のようになり、このフライホイール効果により、
モータに流れる電流はトランジスタがOffの間にも休みなく流れているように
見えることになり、平均電流もOn時の電流とこの回生電流の和となります。




【ICによる実際回路】

モータ制御用の専用ICの中に、可変速制御の機能を盛り込んだものが
あります。下記に代表的なものを使った実際の制御回路例を紹介します。
下記例はステッピングモータ用ですが、単独でDCモータの可変速制御
用としても使うことが出来ます。

TA7289P  PWM方式バイポーラ型ステッピングモータドライバ

特徴
 ・動作電源電圧範囲    Vcc = 6〜27V
 ・正転、逆転、ストップの3モード選択制御可能
 ・4bit D/Aコンバータ内蔵、可変速制御可能
 ・ドライブ能力  Io = 1.5A Max
 ・PWMチョッパ方式による定電流駆動方式
 ・外付け部品点数が少ない
 ・入力は LS-TTL コンパチブル



ICの内部回路ブロックは下図の様になっており、パルス幅の基準となる
のこぎり波を、D/A変換部の出力の直流レベルで上下させるます。


この様子を図で表すと、重ね合わされるD/A変換部の直流レベルにより
のこぎり波が上下に動き、出力レベルを切る位置が連動して動きます。
これにより、出力のOn/Offのパルス幅が可変されることになります。


【実際の使用例】

下図はPWM方式の可変速ICを使った製作例で、月面走行車の車両側
の回路です。PICで直接TA7289Pをコントロールしています。
4ビットのデータをPICのポートで設定し、正逆転の制御信号によりモータ
が回転を始めます。




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