コイルとトランス


【コイルとトランス】

コイルとトランスはいずれも銅線をぐるぐる巻いたものという意味で
同類に属しています。しかし、特性は大きく異なり使い方も全く違い
ます。
しかし、いずれも「インダクタンス」という単位で大きさを表し、原理も
「電磁誘導」を使っているという意味では同じ動作をします。

【インダクタンスの単位】

コイルの高周波信号の通りにくさ、つまり抵抗をインダクタンスと
呼びますが、その単位は「H:ヘンリー」が基本ですが、実際に
使われる単位は下記となっています。

   μH :マイクロヘンリー 1/10×6乗
   mH :ミリヘンリー    1/10×3乗




【種類と用途】

コイルとトランスをその特性などで分類すると下記の様になります。

分類

名称

機能・用途

コイル

インダクタ
チョークコイル 高周波に対して抵抗の働きをし、高周波を減衰させるのに使う。高周波用フィルタ。
高周波
 同調コイル
コイルとコンデンサを並列接続し、ある一定の周波数に同調して信号を取り出すために使う。TVやラジオの同調回路など。
バーアンテナ 同じく同調用だが、内部び挿入するコアを特別に長くしてアンテナと同等の特性を持たせたもの。携帯ラジオに使われている。
電源用チョーク 低周波に対しても、特に大きな抵抗を示すようにして、電源ノイズ防止用のフィルタや、平滑回路のフィルタに使う。
トランス 電源トランス 複数のコイルを同じ磁心に巻いたもので、電圧変換の機能を有する。これを利用して、交流電圧を降圧あるいは昇圧させるのに多用する。
スイッチング
電源用トランス
電源用トランスと同じだが、周波数が高いため小型で効率の良いトロイダルコアを使っている。
オーディオ用
トランス
トランジスタ回路などでインピーダンスが大きく異なる場合、伝達ロスを少なくするためにインピーダンス変換用として使われるトランス。最近は回路の工夫で必要無くなったため余り使われなくなった。



【回路図記号】

回路図に使われる記号は下記のようなものが良く使われますが、
多少異なった形のものもあります。

回路図記号

略号

名  称

機  能 

RFC

チョークコイル 高周波阻止用コイル
フィルター用コイル

同調コイル
IFT
段間トランス
高周波同調用
俗称FCZコイル

TR

電源トランス 電源用変圧用


【高周波チョークコイル(RFC)】

単純な高周波用のフィルター用コイルです。
種類は多く、下記写真のように色々な形のものがあります。


 回路図記号






コイルとしては単純で、容量範囲としては、数μHから数mHです。
数μH以下のものには空芯のものもありますが、通常はコアが
使われています。



【高周波同調用コイル】

高周波回路の伝達を効率良くする目的で使われるコイルです。
良く使われるものに「FCZコイル」と呼ばれるものがあります。
(FCZ研究所製)
下の写真のケースに入っているのがFCZコイルです。
写真の左は、モノコイルと呼ばれ、特定の周波数用の発振出力
用に作られたものです。

FCZコイルには写真中の10mm角と右の7mm角の2種類が
あります。5mm角というのもありますが、我々の工作にはちょっと
使いにくいので省略します。

 
 回路図
 記号




FCZコイルで標準として用意されている周波数は下表となって
います。
                

周波数
MHz

10mm角タイプ

7mm角タイプ

同調容量pF

Q

同調容量pF

Q

1.0

820

75

820

100

1.9

390

85

390

75

3.5

220

70

220

75

150

80

150

70

120

80

120

50

100

80

100

70

14

68

75

70

65

21

39

95

−−−

 

25

−−−

 

47

70

28

33

70

(25MHz+33pF)

 

50

15

100

15

45

80

45

10

80

144

5〜7

50

5〜7

60




A

B

C

D

E

F

07S

7.2

4.5 1.0 0.7 15.3 12.0
10S 10.0 7.0 1.5 0.7 16.5 12.0

【中間周波トランス(IFT)】

IFTと呼ばれるコイルで、FCZコイルと同様に金属ケースに入って
います。(Intermediate Frequency Transformer)
違いは、中間周波数として使われる455kHzか10.7MHzに
同調するコンデンサがあらかじめ並列接続されて内蔵している
ことです。

写真はコイルの底の写真で、左側はFCZコイルで右側がIFTです。
IFTの方にはコンデンサが真中のスペースに取り付けられている
のが分かります。



【バーアンテナコイル】

携帯ラジオの同調用コイルで、特にコアを大きくして受信感度が
良くなるようになっています。
形や大きさには多くの種類があります。
一般にバリコン(バリアブルコンデンサの略)と並列接続されて
同調周波数が可変できるようにしてラジオ電波と同調を取ります。


いずれもAMラジオ用
のバーアンテナです




【電源用チョークコイル】

電源周波数でも十分のインダクタンスとなるようになっている
コイルで、大型のトロイダルコアに銅線を巻いて作られています。
入力電源用のフィルターや、スイッチング電源の出力フィルター
として使われています。



左側2つが電源
フィルター用

右下の2つは
自作の高周波
同調用です。
高周波にも
最近使うように
なって来た。



【電源トランス】

周波数が低いのと、電流容量が大きいことから大型のコイル
となります。出力の電圧と電流容量によって多くの種類が
あります。
AC100VからDC電源を作るときには必須の部品です。
しかし、市販の電源は最近はほとんどスイッチング電源となって
おり、重く大型の電源トランスを使う方式は少なくなって来ました。
しかし、我々アマチュアには簡単で安く出来るトランス方式は
今だ健在です。



回路図記号
は下図が
一般的です。











【オーディオ用トランス】

最近のトランジスタ回路では、回路の工夫が進み、トランスレスと
なっているため、ほとんど見かけなくなりました。
用途は、トランジスタアンプの段間や出力に接続されるスピーカー
とのインピーダンスの整合に使われています。









<サンスイST型ドライバトランスの例>
品 名

インピーダンス

直 流 抵 抗

巻線比

形  状

重量(gr)

1  次

2  次

1  次

2 次

ST-24

1KΩ

*2KΩ

57Ω

160Ω

0.7:1

CB-19

13

ST-34

5KΩ

*1KΩ

244Ω

89Ω

2.17:1

CB-19

15

ST-52

600Ω

*2KΩ

37Ω

165Ω

0.522:1

CB-28

59


<サンスイST型アウトプットトランスの例>
品 名

出力(W)

インピーダンス

直 流 抵 抗

巻線比

形 状

重量(gr)

1  次

2  次

1  次

2  次

ST-32

0.2

*1200Ω

8.0Ω

60Ω

0.62Ω

12.0:1

CB-19

13

ST-42

0.7

*300Ω

4Ω,8Ω

17Ω

0.53Ω

5.97:1

CB-28

59

ST-81

0.2

*1KΩ

57Ω

0.67Ω

10.8:1

CB-19

14




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