実験用電源ユニット(その2)

  高効率のスイッチングDC/DCコンバータモジュールを使った
  汎用の実験用電源です。
  NiCdバッテリ代用電源も一緒に組み込んでしまいました。


【概要】

実験にこれまで使っていた前ページの「実験用汎用電源」も古くなり、かなり傷んで来たのと
便利な高効率のスイッチング電源モジュールが手に入ったのでこれを利用して
実験用の電源を更新することにしました。
ついでに後ページの「NiCd代用電源ユニット」も中身を一緒に内蔵させてしまいました。
ケースも周波数カウンタなど他の測定器と外観を統一して結構見栄えよく出来ました。


左図は3つの機器を並べて置いているところです。
上から、周波数特性測定器兼低周波信号発信器
8桁周波数カウンタ、本製作の電源です。
これにディジタルマルチメータがあれば、一通りの
実験がデータを元に出来るようになります。




【DC/DCコンバータモジュールの仕様】

今回使ったスイッチング電源モジュールは、新電元工業叶サのもので、秋葉原で
簡単に入手できるものです。
 品名は 「非絶縁型DC/DCコンバータモジュール  HPH05002M」というシリーズ
です。
ここで使ったものはHPH05002Mで5V2Aのものですが、これとHPH12002Mという
12V2Aのタイプもあります。
(このHPHシリーズは、メーカでは現在、既に保守廃品種になっています。)

下表がこのDC/DCコンバータモジュールの規格です。
項  目 規  格 備  考
定格入力電圧 32V
入力電圧範囲 24〜40V かなり幅広いので整流平滑回路
設計はラフに考えられる
効率 75%Typ 効率が良い
動作周波数 35kHz
定格出力電圧 5.0V
出力電圧精度 ±5%以内
入力電圧変動 10mVTyp Vin=24〜40V Io=定格
負荷変動 90mVTyp Vin=32V Io=0〜定格
温度ドリフト係数 ±0.7mV/℃ Ta=-10〜80℃
出力電圧可変範囲 約2.5V〜11V 外付け可変抵抗による
定格電流 2.0A
電流変動範囲 0〜2A
リップル 50mVp-p Vin=32V Io=定格
やや多めである
過電流保護 定格電流以上で電圧垂下 自動復帰

この規格から分かることは、
(1) 入力電圧が高くできるので入力のトランスの選択が楽になる。
   また32V定格はちょうど24VACを両波整流したときの電圧となります。
(2) 効率が良いので熱設計が楽になる。
  特にスイッチング方式なので負荷が高いほど高効率になりますから、熱発生
  が非常に少なくなり、もともとモジュールに組み込まれている放熱板以外の、
  特別な熱対策は不要です。
(3) 出力電圧が可変できるので実験用にちょうど良い
  外部に可変抵抗をつけることで出力電圧を可変できますので、便利に使えます。
(4) 十分な安定度を持っている
  負荷変動、入力変動、温度変動に対し、実験用には十二分の安定度です。
(5) リップルがやや多い
  50mVのリップル電圧があるのでアナログ回路には不向きです。
  従ってアナログ用には別に3端子レギュレータによる供給回路を追加しました。

このDC/DCコンバータを下図のように汎用穴明き基板で組み立てました。
配線数も部品数も少ないので、汎用基板で十分でしょう。
この基板にダイオードブリッジや、平滑用コンデンサ、出力用コンデンサも実装して
います。







【仕様】

このDC/DCコンバータモジュールを使って考えた実験用電源の仕様と使い道は
下記のような前提で考えました。

入力電源
   AC100V ±10V  (最も一般的な値)

出力仕様
 (1) 5V固定 最大2A
   ディジタルロジック回路を主な使い道とします。ディジタルカメラ用の電源にも流用
   マイコンボードなどの電源にも使えます。

 (2) 2.5V〜10V(連続可変) 最大2A
   汎用の実験用です。
   モータ用電源、3端子レギュレータ回路内蔵のディジタル回路、アナログ回路電源
   供給用

 (3) 1.2Vから12.5V(ステップ切り替え) 最大0.3A 
   汎用の実験用  アナログ回路、高周波回路用
   NiCdバッテリの代用可能
    (出力設定電圧、1.2V、2.5V、5.0V、7.5V、10V、12.5V)


【回路構成】

上記仕様を満足する回路構成として下図のような回路としました。
まずハイパワー用の入力電源としては、24V1Aの電源トランスを使い、最大24Wですから
効率80%として20Wは正味で使えますから、5V2Aで2組はフルパワーで使えますので、
1個のトランスで出力の(1)と(2)をカバーすることにします。
AC24Vをブリッジ整流、平滑するとおよそDC32Vとなりますからぴったりの規格になります。

残りのアナログ用の電源には、NiCd代用電源で使った回路をそのまま流用します。
電源トランスには、16V0.3Aを使いましたので、効率から行けば、0.2A程度が限度ですが
ブリッジ整流平滑回路で、無理すれば最大0.3A程度は出力として取り出せます。

連続可変電圧の出力用に、電源電圧監視が必要なので、ちょっと古くなりますが、アナログ
メータを使いました。これで何となく実験をしている気分になるかと思います。手元にあった
メータが100μAのメータでしたのでこれに100kΩを直列に挿入して0−10Vの電圧計と
して使います。100kΩは75kΩの固定抵抗と、50kΩの可変抵抗を直列にして校正が
出来るようにしておきます。
DC/DCコンバータの電圧可変用の可変抵抗にも同じく可変範囲を制限するために10kΩの
固定抵抗と100kΩの可変抵抗を組み合わせています。これでちょうど2.5Vから10Vの
可変範囲となりました。
出力に並列に接続されている1kΩの抵抗は、無負荷の時に、出力コンデンサのチャージを
放電させるためにあります。これが無いと、なかなか放電しないため、メータの動きがスロー
になり電圧設定がやりにくくなってしまいます。

【注意】DC/DCコンバータの可変端子にノイズ取り用のコンデンサを接続すると異常発振
     するので抵抗だけを接続するようにします。









【実装詳細】

今回のケースには、他の製作例で使ったタカチのプラスチックケースと外観を合わせるため
同じシリーズの中で背の高い「SYH-150」というプラスチックケースを使いました。
ケースの寸法は 150W×85H×170D ですので大型の電源トランスも余裕で実装でき
ます。


ケースの側面には黒い帯びの部分が追加されて
高さが高くなっています。
前面パネルに全ての操作部分を実装しています。




アナログメータによる電圧モニタ
出力端子は端子台とターミナルの2種類
アナログ用電源はスイッチにによる電圧切り替え

内部実装の全体、電源トランスが大きいのでかなりの
部分を占有する。
DC/DCコンバータの基板は立てて実装した。



基板は立てて取り付けるため、L金具を2ヶ所基板に
ねじ固定して振動でがたつかない様にします。



NiCd代用電源で使ったものと同じ基板で、3端子レギュレータ
に放熱器をつけて直接基板に実装します。



アナログメータの取り付けは大きな丸穴に本体を通し、
4本のねじで固定します。
またメータは100μAの電流計でしたので、直列に約
100kΩを挿入して電圧計とします。
ここに半固定抵抗器を使って校正できるようにします。

電圧切替え用ロータリスイッチと出力On/Offスイッチ
電源モニタ用発光ダイオードなどの取り付け状態
端子台には貫通型を使い、パネル表面には配線は
出ないようにします。


背面パネルにはヒューズが実装されているだけです。







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