赤外線リモコンの音量制御ユニット
IC化された電子ボリュームを使って、ステレオの音量を
赤外線でリモートコントロールできるようにしたユニットです。
赤外線の受信と、電子ボリュームの制御をPICで行っています。
【概要】
赤外線を使ったリモートコントロールです。音楽を好みの位置で聴きながら
自由に音量調整ができるのはなかなか便利です。
製作したのは受信側の音量調整をするユニットです。
ここでの主役は、μPOTと呼ばれているICでできたオーディオアッテネータ
つまりボリュームです。型名はLM1972というナショナルセミコンダクタ社の
製品で、アッテネータ機能が2チャネル内蔵されていますのでステレオには
最適です。
このICの制御はSPI通信という3線式のシリアルインターフェースとなって
いますので、PICマイコンで制御することにします。
さらに赤外線通信も同じPICマイコンで制御することにしました。これで2個
のICだけで制御ユニットが構成できてしまいます。
これを組み込んだディジタルステレオアンプの製作例は下記へ。
★ディジタルステレオアンプの製作
【LM1972の概要】
このICの特徴は下記のような点で、特に低歪で周波数特性が良くなっていますので、
ハイファイのステレオに使ってもこれで音質が悪化する心配はまず無いでしょう。
・電源電圧 : 4.5V 〜 12V
・全高調波歪+ノイズ(THD+N) : 0.0008% Typ 0.003% Max
・周波数特性 : 100kHz(-3dB) Max
・減衰範囲 : 78dB
・チャネルセパレーション : 100dB Min
・SN比 : 110dB Min
このICは20ピンのICで内部構成とピン配置は下図のようになっています。同じ機能の
ボリュームが2系統内蔵されています。SPI通信で指定されたチャネル側の抵抗ラダーを
切り替えて指定の減衰値とするようにします。
この切替の段階は127段階で0dBから-78dBの範囲となっています。
この切替状態は電源オフによって消えてしまい、次に電源オンになったときは不定ですので、
電源オフ時と同じ値にするようPICマイコンのEEPROMに保存してで制御することにします。
SPI通信のタイミングとデータフォーマットは下図となっています。
まず送信データは2バイトの組で構成し、最初にチャネル指定を送信してから続けて
減衰量のデータを送信します。
送信側からは、まずLOAD信号をLowにしてから、データとクロックを出力します。
このクロック信号の立ち上りエッジでデータが上位ビットから内部に取り込まれると同時に、
直前に受信済みのデータがやはり上位ビットからシフト出力されます。
このときのチャネル選択のデータと減衰量は、減衰ステップが3段階に
なっていて、
0dB(0000 0000) 〜 47.5dB(0101 1111) の間は0.5dBステップの96段階で、
48dB(0110 0000) 〜 78 dB(0111 1110)の間は1.0dBステップの31段階で、
(0111 1111)以上の設定値は100.0dBの減衰で一定となっています。
したがって合計で127段階の設定ができます。
【回路構成】
この赤外線リモコンで音量制御をするユニットの構成は下図としました。
まず全体の制御にはSPI通信のモジュールが内蔵されているPIC16F819を
使いました。これに赤外線受光モジュールを直結して、受信の制御はすべて
ソフトウェアで行うこととしました。
LM1972は標準的なSPI通信で接続できます。ただしCSのコントロールが必要
ですのでこれをI/Oピンとして接続します。
この構成に基づいて作成した回路図が下図となります。PICマイコンのソフトウェア
で大部分の機能を実現しますから、回路としては簡単な構成となっています。
赤外線受光センサは出力を直接PICマイコンに入力しています。これをタイマ1の
1msecのインターバルごとに読み込んで赤外線の受信をしています。
受信状態が目で見てわかるように、発光ダイオードを1個付けて正常受信のつど
表示を反転します。
あとはSPIのピンにLM1972を接続して直接制御しています。PICのSDI入力への
信号が5V以上になることがありうるので、抵抗を直列に挿入して電流制限をして
保護しておきます。
電子ボリュームICの信号の入出力ラインは、電解コンデンサで直流成分をカットして
通過させています。
電源は、元の入力をステレオアンプが12Vでしたのでそのまま入力として、電子
ボリュームにはそのまま12Vを供給しています。PICには5Vが必要ですので
3端子レギュレータを挿入しています。
【外観】
これで作成したリモコン音量制御ユニットの外観は下記の写真のようになります。
IC2個だけでできていますので簡単です。
右端にあるのが赤外線受光モジュールです。
左下は赤外線受光モジュール
音量制御ユニットをステレオセットに組み込んだ
ところです。左下が音量制御ユニット、その上側は
発光ダイオードアレイによるVUメータ制御部と
パネルに取り付けたVUメータ部です。
★ディジタルアンプの製作